女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「ハルの職場の人に「一緒に暮らしている、ハルの恋人です」って、言うのは気恥ずかしさもあったが」

 改めて言われてみると、確かに恥ずかしい。
 けれど、晶はもう少し違った考えを口にした。

「同棲してるって紹介だと、浮ついているような気がしてな。ハルの印象が悪くなるのも、嫌だったから」

「アキ」

 そこまで話して、晶は茶化すように言う。

「ま、男と暮らしてるって言った時点で、同じだよな」

「そこまで、考えてくれていたなんて。ごめんなさい」

「謝る必要ないだろ」

「だって」

「なあ。俺の寝室に忘れ物があって。取りに行ってもいいか?」

「煙草、やっぱり吸うんですか?」

 煙草と言われ、違う想像に考えが及びそうになり「ハハ」と軽く笑う。

「どうして笑うんですか」

「いや。それを忘れたわけじゃなくて。まあ、でも、そうだな。向こうで寝ようか」

 放り投げたPHSも拾い、それも寝室に持っていく。

 意味がわからない。という顔をしている遥と一緒に、自分の寝室に戻る。
 冷えてしまったベッドに湯たんぽと、遥を先に入れ、晶は鞄から封筒を取り出した。
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