女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
朝、事務所につくと久しぶりに会う人物がいて、挨拶を交わす。
「久しぶりだな。達哉(たつや)」
「晶くん。久しぶり」
達哉は、直樹の弟だ。
「達哉と一緒に働くようになるとは、な」
達哉は歳の離れた弟で、法科大学院を卒業し、弁護士になるべく司法試験の勉強を続けている。
「ずっとお願いしていたのに、兄さんは反対して。今だって「やめとけばよかったか」なんて言うんだ」
「当たり前だろ。今度の5月に司法試験を控えているくせに、パラリーガルとして働きたいだなんて」
奥の部屋から顔を出した直樹が、兄の顔をして達哉に意見する。
パラリーガルは事務員よりも、専門的な知識を持ち、弁護士のアシスタント業務に携わる。
「やれるよ。実際の仕事での方が、身につく内容もあるだろうし」
「そんな甘い世界じゃないぞ」
心配になるのはわかる。
近くにいれば、見なくていい部分まで見えて、直樹も気が気ではないだろう。
そう思うと、遥が別の場所で働いていた方が、晶としても仕事に専念できるのかもしれない。