女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 女の事務員が嫌だとわがままを言ったがために、達哉の要望を聞き入れた部分もあるだろうと思うと、さすがに申し訳なくなる。

「めでたく司法試験に受かれば、司法修習生になって研修所だ。達哉と一緒に働くのは、短そうだな」

「一発合格した場合だろ」

 働きながらでは無理だと言わんばかりの直樹に、達哉は肩を竦めた。

 司法試験に受かれば、最高裁判所の下にある研修所に所属するのが決まりだ。
 司法修習生は司法修習に専念するために、兼業は禁止されている。

 5月の時点では、陽菜は出産していないだろう。
 一番事務員のいてほしい時期に、達哉はいなくなるのかもしれない。

 もちろん受かればの話だが、自分たちの都合のために落ちてくれと願うのは、人として間違っている。

 心配したところで、なるようにしかならないか。
 そう切り替えて、今日の予定に目を通した。
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