女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「遥ちゃん、さっきの俺の弟で。達哉ね」
いないところで紹介もないと思うのだけれど、それは直樹に任せ、晶は口を挟まない。
「遥ちゃん、ここで働かない?」
唐突なお願いに、堪らず晶が口を開く。
「は? だから断られたって」
「俺は、遥ちゃんに聞いてんの」
直樹に咎められ、晶は再び口を噤む。
「ちょっと、待ってよ。俺にもわかるように説明して」
コーヒーを淹れてきた達哉がトレイをテーブルに置き、最もだと思う要求をした。
「彼女は、山本遥ちゃん」
「遥は、俺の恋人だ」
直樹の言葉を途中から引き取って、晶が言うと、遥は顔を俯かせ、頬を赤らめた。
「嘘。晶くんと恋人との、隠し子とかじゃなくて?」
直樹と晶は盛大に吹き出して、遥の機嫌を損ねる。
特に傑作なのは、飲み物を用意した達哉が遥の前にだけオレンジジュースを置いたのだ。
「どうせ、私は」
「ごめん。遥ちゃん」
「ああ。悪い。新しい意見で、つい」
達哉だけが、きょとんとして、三人の様子を見つめる。
「二人とも、なに笑ってるの? どう見ても小学生」
指差して断言する達哉に、晶が訂正する。