女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「いや。俺がご執心の恋人本人」

「ハハ。違いない」

 パートのおばちゃんに言われた台詞を真似て言うと、直樹は笑い、遥は顔を真っ赤にさせた。

「まさか。こんなチビが? 俺は認めない」

「どうして達哉の許可がいるんだよ」

 晶がすかさず聞き返すと、達哉は照れもせずに言う。

「晶くんは俺の憧れなんだ。それをこんな小学生みたいなやつに」

 直樹は未だに、クククッと堪えきれない様子で笑っている。

「ったく。直樹は引っ掻き回したいのが、見え見えなんだよ」

 晶は遥の手を引いて、立ち上がる。

「仕事、終わってるから。俺は帰るな。どうせそのつもりで、この時間にハルを呼んだんだろ」

「ああ、お疲れ」

「ああ、お先」

 遥は晶に手を引かれ、そのまま繋がれる手に、胸をドキドキさせる。
 気持ちを伝え合った後、晶の仕事が忙しく、二人で出掛けるのは初めてだ。

 出て行く二人の背中を、達哉は納得できない顔で見送った。
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