女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 グレーのニットワンピースは上質な手触りで、落ち着いたデザイン。

 腰に華奢なベルトがあり、サイドにだけあるプリーツが、甘すぎない大人っぽい可愛らしさを演出する。

 けれど遥にしてみたら、Vの胸元が恥ずかしいし、上質な生地は体のラインを露わにさせて、落ち着かない。

 ただ、サイズはさすが店員が見繕ってきただけはある。
 背の低い遥でも、ピッタリだ。

「いかがですか?」

 店員の声掛けに、「あ、あの。ちょっと出られません」と弱気な声を上げる。

「着たんだよな。開けるぞ」

 晶の容赦ない声がして、体を両腕で覆う。

「まあ! お似合いです」

「ああ、そうだな」

 片手で口元を覆う晶も、グレーのセーターと深いブラウンのパンツ。
 その上に、カーキのモッズコートを羽織っている。

 釘付けになっている遥に、晶は苦笑して「変か?」と聞く。

「いえ。とても似合っています」

 素直な感想を口にすると、晶は頬を緩ませた。

「お二人ともスタイルがよろしいので、とてもお似合いです」

 店員の存在を忘れ、見つめ合っていた事実に恥ずかしくなり、顔が熱くなる。
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