女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 次は美容院の扉を押した晶に、いよいよどういうつもりかと問いただしたくなる。

「今の服装に、似合う感じで」

 晶は勝手にリクエストをし「俺、荷物を置いてくるから」と、美容院を出て行ってしまった。

「素敵な彼氏さんですね」

 残された遥は、どう受け答えしていいのか、言葉に詰まる。

「記念日か、なにかですか?」

 質問されて、やっと気が付いた。
 明日は自分の誕生日だ。

「明日、誕生日です」

「そうなんですね。前日から素敵ですね」

 本当に、明日が誕生日だから?
 でも、ほかに理由が思い当たらない。

「変身して驚かせちゃいましょう」

 とびっきりの笑顔で提案する美容師さんに、申し訳なくなる。
 きっと変身しても、晶は喜ばない。

 それなのに、どうして。

 モヤモヤした気持ちのまま、化粧にそれから髪のアレンジまでしてもらった。
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