女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「本当に、今日はよかったんですか? 晶は苦手な色々を、我慢しているんじゃないかなって心配になります」

 女が嫌いだ。
 化粧臭いのも、女を象徴するもの全てが嫌いだ。

 けれど女である遥が、その部分を避けて通るのは間違っていると思う。
 年相応の姿をすれば、周りの見る目が変わるだろう。

 遥は、自分の正しい評価を知るべきだ。

 そして、俺は、女として武装する遥を受け入れていかなければ。

「キス、してもいいか」

 立ち止まり、遥を見つめる。

「でも、お化粧したままで」

「いい。食事でほとんど取れてる。普通の女は化粧直しするんだろうな。大変だよな。女って」

 そんな風に思う自分に、感慨深い気持ちになる。

「でも、やっぱり、お風呂に入って、全部落としてからにしたいです」

「そうか。それなら家で、たくさんキスしような」

「えっと、はい」

 控えめだけれど肯定の言葉に、胸が音を立てて速まる。

「言質、取ったからな」

 今すぐに唇を重ねたい思いを抑え、マンションへと歩き出した。
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