女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 目を覚ますと、美しい顔が規則正しい寝息を立てていた。
 寝顔を見つめるのは数えるほどしかないような気がして、ここぞとばかりに見つめる。

 体には甘い怠さを感じ、めくるめく夜を過ごしたのだという実感が湧いてくる。
 この目の前の美しい人と。

 昨晩の色気ある晶の眼差しを思い出し、全身が熱くなる。
 初めての感覚ばかりで戸惑い、恥ずかしくて怖くて。
 それなのに嫌じゃなかった。

 男の人に女として見られるのが怖かった。
 そういう対象に見れるのは、自分が穢らわしく思えた。

 今はーー。

 見つめているだけで涙がこぼれそうになり、頬に手を伸ばす。

「あき、ら」

 頬に手が触れると、ゆっくりとまぶたが開いた。

「どうした。目が覚めたら、怖くなってきたか?」

 手を握られると、細くて女性的だとばかり思っていた晶の力強い腕に引き寄せられ、すっぽりと体を包まれる。

 頬を伝う涙を慌てて拭って、首を振った。
< 148 / 160 >

この作品をシェア

pagetop