女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「そういうんじゃないんです」

「そう。体は平気か」

「そ、それは」

 腰回りを撫でられ、恥ずかしくて晶に縋り付く。
 そして不安な胸の内を話した。

「もっと、その、痛いのだと」

 ヒュッと息を飲んだ音を聞いて「アキ、大丈夫ですか?」と顔を見上げると、晶は顔を片手で覆っていた。
 手に隠しきれない耳が赤い気がする。

「俺はいいから、続けて」

 続けてと言われ、不安の続きを話す。

「私、変なんじゃ」

 声が震えていると気づいた時には、強く晶に抱き竦められていた。

「変じゃない。そうなるように俺が仕向けたんだ。お前に恐怖を植え付けたくない」

 より強く腕を回され「アキ、苦しいです」と言うと緩められ、笑われた。

「ったく。軟弱だな」

「アキが馬鹿力なんです」

 不平のこもる声を聞き、ますますクククッと抑えきれない笑いを漏らす。

「アキ?」

 顔を近づけると、両手でそれを阻止された。

「キスで誤魔化そうなんて!」

 遥への眼差しを和らげると、視線の先の遥の瞳が揺れ、恥ずかしそうに目を伏せた。
 そういう姿が欲情を煽るって、いつか教えてやらないと。
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