女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「親に仕返ししたくなる」
「え」
不穏な台詞運びに、晶の顔をまじまじと見つめる。
「もしも僅かでもそう思っているのなら、一番の仕返しはお前が幸せでいることじゃないか?」
幸せでいることが、一番の仕返し。
晶の言い分を心の中で繰り返す。
「少なくとも俺はそう思う。クソババアの手を離れて幸せになってやったぞ。ざまーみろってな」
晶らしい言い回しに「ふふ」と笑みをこぼす。
「ま、そう思えたのは、遥がいてくれたお陰だ」
「私?」
自然な『遥』呼びも、甘い囁きも。
晶らしくなくて戸惑う。
それなのに晶は慈しむように告げた。
「ああ。お前は特別だ」
『特別』その言葉に何度救われたかわからない。
「気持ちの整理がつくまで待ってもらえませんか」
待ってもらったところで整理がつくのかはわからない。
戸惑いを汲み取ってくれたようで、晶は「そうか。わかった」と頭をかき回した。