女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「親に仕返ししたくなる」

「え」

 不穏な台詞運びに、晶の顔をまじまじと見つめる。

「もしも僅かでもそう思っているのなら、一番の仕返しはお前が幸せでいることじゃないか?」

 幸せでいることが、一番の仕返し。

 晶の言い分を心の中で繰り返す。

「少なくとも俺はそう思う。クソババアの手を離れて幸せになってやったぞ。ざまーみろってな」

 晶らしい言い回しに「ふふ」と笑みをこぼす。

「ま、そう思えたのは、遥がいてくれたお陰だ」

「私?」

 自然な『遥』呼びも、甘い囁きも。
 晶らしくなくて戸惑う。

 それなのに晶は慈しむように告げた。

「ああ。お前は特別だ」

『特別』その言葉に何度救われたかわからない。

「気持ちの整理がつくまで待ってもらえませんか」

 待ってもらったところで整理がつくのかはわからない。
 戸惑いを汲み取ってくれたようで、晶は「そうか。わかった」と頭をかき回した。
< 154 / 160 >

この作品をシェア

pagetop