女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 それから遥は、梅元フーズの正社員にはならなかった。
 社員としてパートやアルバイトの人たちを取り仕切る仕事は向いていない、という自分なりの判断らしい。

 アルバイトを続ける傍ら、弁護士事務所にも手伝いとして顔を出すようになり、あれほど酷評していた達哉も今は認めている。

 あの日した化粧と服装で現れた遥に、達哉は目を奪われていた。
 その達哉の呆けた表情に吹き出しつつも、なんとなく面白くないなと思ったのは誰にも秘密だ。

 そして年相応の女性としての扱いをされ、その上で気安く話せる同年代の異性という位置づけになった遥と達哉との関係をありがたく思う。
 しかしやはりどこか面白くないのも、腹の奥底に隠している。

 すっかり『女』に武装する術を身につけた遥と一緒に事務所から自宅へと帰る。

「アキ」

 小さく駆けた遥は、自然に腕を絡ませた。
 化粧や香水の嫌なにおいじゃない、遥自身の甘い香りが鼻をくすぐり胸が疼く。
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