女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「どうした。ばあさんに会いたくなったか」
「それは、そうですね。会いたいです」
しばらくの沈黙の後、遥はぽつりと呟くように言った。
「家族と呼べる人はおばあちゃんだけで」
「ああ」
「それでも、いいんでしょうか」
どう答えればいいのか。
正解があるのかわからないが、思ったままを伝える。
「そういう意味では、俺に家族と呼びたい人間はいないな。ばあさんがいるだけ良かったんじゃないか」
「本当はアキが前に言ったみたいに親と向き合った方がいいのかもしれませんが、私には……」
その言葉を気にしていたのだと思い、訂正する。
「いいよ。言った俺も無理な気がしてる。ただ、今後もクソババアのいざこざに遥を巻き込むかもしれない」
歩きながら会話をして、マンションまでついた。
玄関に先に入った遥は、靴を脱ぎながら遠慮気味に言った。
「そしたら、またアキが助けてくれます、よね」
見上げる瞳は不安からなのか、期待からなのか、僅かに揺れている。