女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「抱き枕か。せいぜい寝相よく寝ろよ」
隣の遥の肩に腕を回して引き寄せると、自然な所作で頭にキスを落とす。
すると、不満げな声がした。
「アキって、持って生まれた、天性の才能なんですか?」
「なにが」
「なんていうか、手慣れてて、嫌です」
ブスッとした声を聞き、晶は気に入らないといった様子で鼻を鳴らした。
「慣れてて、たまるか」
「だって」
腕をほどくと、遥の恥ずかしそうな眼差しと目が合った。
ここでキスしたら、もっと言われるのか。
そう思って、グッと堪えた。
「アキは、お母さんが嫌で、女嫌いになったんですよね」
「ああ、まあ」
正確には、外に女を作った父親を許せなかった母親が、子どもの頃の晶を女として育てたからだ。
そのくせ、女として育てるには無理がある、この低い声と身長になった途端に捨てられた。
晶にしてみれば、女の代表のような母親の仕打ちに、父親の卑しい愛人。
そんな女ばかりが近くにいたせいなのは、多分にある。