女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「抱き枕か。せいぜい寝相よく寝ろよ」

 隣の遥の肩に腕を回して引き寄せると、自然な所作で頭にキスを落とす。
 すると、不満げな声がした。

「アキって、持って生まれた、天性の才能なんですか?」

「なにが」

「なんていうか、手慣れてて、嫌です」

 ブスッとした声を聞き、晶は気に入らないといった様子で鼻を鳴らした。

「慣れてて、たまるか」

「だって」

 腕をほどくと、遥の恥ずかしそうな眼差しと目が合った。

 ここでキスしたら、もっと言われるのか。
 そう思って、グッと堪えた。

「アキは、お母さんが嫌で、女嫌いになったんですよね」

「ああ、まあ」

 正確には、外に女を作った父親を許せなかった母親が、子どもの頃の晶を女として育てたからだ。

 そのくせ、女として育てるには無理がある、この低い声と身長になった途端に捨てられた。

 晶にしてみれば、女の代表のような母親の仕打ちに、父親の卑しい愛人。
 そんな女ばかりが近くにいたせいなのは、多分にある。
< 26 / 160 >

この作品をシェア

pagetop