女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「く、苦しいです。アキ」

 遥の訴えに僅かに力を緩め、心の声を漏らす。

「この前は、もっと怯えてた」

 か細い声は情けなく、遥に拾い上げられた。

「それは、その、急で、驚いて。でも、蕁麻疹が出なかったから、やっぱりアキなんだなあって」

「どんな感想だよ」

 いい。
 今はそれだけで十分だ。

「寝ましょう。明日は久しぶりに、アキのご飯が食べたいです」

「ああ、ハンバーグにしよう」

「半熟目玉焼き、のせましょう!」

「チーズもな」

「やった!」

 甘い雰囲気には、程遠い会話。
 けれど、今はそれが心地良かった。
< 31 / 160 >

この作品をシェア

pagetop