女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「アキはなにもかも出来て、たまに嫌味です」

「褒めてもなにも出ないぞ」

「褒めてはいません」

 口を尖らせる遥にククッと喉を鳴らし、晶は穏やかに問いかけた。

「親と向き合ってみないか」

「え」

 頬張っていたパンを皿に置いて、遥は揺れる瞳を晶に向けた。

「いや、うん。自分で言ってて背筋が凍る思いがしてるから、無理なのは百も承知だ。ただ」

「ただ?」

 心許ない声を出す遥の瞳に、晶の顔が映る。
 言い出した晶の方こそ、不安に押し潰されそうな表情をしていて、晶は自分が情けなくなった。

 それでも、目をゆっくりと閉じながら続けた。

「今までの人生、ずっと親に振り回されて生きてきた。親から離れてからも、気持ちは事あるごとに振り回されてる。もう、解放されたい」

 これは晶自身の願いだった。
 遥とこの先、出来れば一緒に過ごしていきたい。
 その過程で親へのトラウマに振り回されるのは、もう懲り懲りだった。
< 33 / 160 >

この作品をシェア

pagetop