女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「アキはなにもかも出来て、たまに嫌味です」
「褒めてもなにも出ないぞ」
「褒めてはいません」
口を尖らせる遥にククッと喉を鳴らし、晶は穏やかに問いかけた。
「親と向き合ってみないか」
「え」
頬張っていたパンを皿に置いて、遥は揺れる瞳を晶に向けた。
「いや、うん。自分で言ってて背筋が凍る思いがしてるから、無理なのは百も承知だ。ただ」
「ただ?」
心許ない声を出す遥の瞳に、晶の顔が映る。
言い出した晶の方こそ、不安に押し潰されそうな表情をしていて、晶は自分が情けなくなった。
それでも、目をゆっくりと閉じながら続けた。
「今までの人生、ずっと親に振り回されて生きてきた。親から離れてからも、気持ちは事あるごとに振り回されてる。もう、解放されたい」
これは晶自身の願いだった。
遥とこの先、出来れば一緒に過ごしていきたい。
その過程で親へのトラウマに振り回されるのは、もう懲り懲りだった。