女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
晶は遥の背に手を当てて、声を掛ける。
「ゆっくり吐くんだ。大丈夫」
穏やかな声をかけても、遥はそのまま苦しそうに話した。
「母は過呼吸や蕁麻疹が出ても、私が弱いせいだって。男に隙を見せる、私が悪いって。穢らわしいって」
知りもしない遥の母親に、猛烈な怒りが湧き起こる。
怒りに震える指先をギュッと握りしめ、言葉をこぼす。
「そんなわけあるか。そんなわけ。悪かった。もうやめよう。思い出させるつもりじゃなかった」
背中をさすりながら、晶は悲痛な声を漏らした。
遥は晶の胸に顔を埋め、呼吸を整えながら息を吐いた。
「だから男の人に、そういう目で見られるのが怖くて」
胸の奥に鈍痛をもたらした遥の言葉を、晶は重く受け止めた。
「そうか」
まだ、家族のような愛情からのキスだと、スキンシップだと誤魔化せるのか。
それでもいい。俺はハルの傍に。