女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 形ばかりのため息を吐いて、晶は自身の母親について語り始めた。

「俺の母親は、秘書かなにかをしていて、今はフリーのマナー講師だ」

「なるほど、だからアキの仕草が美しいんですね」

「お前、気をつけるつもりないだろ」

 不貞腐れた声を出すと、遥はまた笑った。

「ゆっくりやろう。あと出来れば話す時には、ハルの傍で話したい」

 遥の体に腕を回すと、「これじゃサンドイッチが食べられません」と、不満げな声が聞こえた。

「もう少しだけ」

 母親の話をするだけで、遥のぬくもりを感じたくなる自分の弱さに心の中で嘲笑する。
 遥は心の内を言い当てるように、口を開いた。

「アキは大人で、しっかりしているのに、こうやって弱い部分もあって」

 遥に弱い部分と言葉にされると、情けなくなる。

「弱くて悪かったな」

 それでも腕は離せずに、ギュッと遥を抱きしめる。
 その腕の中で、遥は首を左右に振った。
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