女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 食事を終え、リビングの方に移動すると、二人掛けのソファに先に座った遥が「アキ」と呼びながら、自分の隣をたたいた。

 軽く笑いながら遥の隣に座ると、遥は拗ねたような声を出した。

「どうして半笑い」

「いや。懐いた犬みたいだな、と」

 本当は可愛いやつだなと、思ったけれど、それを素直に口に出せるほど、人生を達観できていない。

「ギュッって」

 小さく手を出す遥に胸が疼いて、遥を抱き寄せる。

「どうした。まだ不安か」

「あの、その少し」

 遥を腕に抱き、言葉をこぼす。

「たまに思う。今までは、土日も関係なく忙しくしていたなあって」

 そんな頃が遠い昔に思える。

「そんなに忙しいんですね。弁護士のお仕事」

 遥は自分のために晶が休んでいた一時期を思うと、申し訳ない気持ちになった。

「いや。ほかに趣味があるわけでもないから、仕事に没頭していたかっただけだ。それでも普通に仕事を始めれば、帰りが遅くなる日も増える」

「そう、ですか」
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