女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
寂しそうな遥の声を聞き、直樹から提案されていた内容を思い出す。
「仕事量を緩和させるためにも、直樹は、奥さんを事務員として正式に雇いたいようだ」
「陽菜さん?」
「ああ。確かに、雑多な事務作業を担当してもらえれば助かる」
遥は陽菜に世話になっているし、陽菜は陽菜で遥を妹のように可愛がっていた。
「私はアキのために、なにもできない」
弱々しい声を聞き、鼻先で笑う。
「ハルになにかしてほしくて、話したわけじゃない。だいたい俺はこの案は、避けたい」
「え? 仕事、楽になるんですよね」
「ああ、まあ。ただ、いくら前よりも女が平気になったからと言ってな。その、なんだ。今はハル以外は、その他大勢の女っていう図式なだけで」
遥は思ってもみなかった晶の発言に、彼の体にギュッと顔を押し付けた。
「な、なんだよ」
晶の上擦った声がおかしくて、遥は笑みをこぼす。
「陽菜さんは、もう平気なんだと」
「おい。俺の女嫌いは筋金入りだぞ。直樹が所用で事務所にいないときを考えると、身の毛がよだつ」
「お化けじゃないんですから」
クスクスと笑う遥に、晶は提案した。