女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「これから時間があるときは、こうやって話さないか」
「こう?」
「ああ、こう」
抱きしめてという意味になるように、腕に力を入れた。
「それで、話せるときで構わない。お互いに両親の話もしないか。話すだけでいい。ただただ嫌いな理由を、言い連ねてもいい」
「親の、話」
「気乗りしないなら、無理に話さなくていい。仕事の話でも、なんでもいい」
そこまで話して「ただ、俺は」と断りを入れた。
「クソババアの話をするときは、遥のぬくもりを感じたい」
胸元に埋めていた顔を上げる気配がして、ギュッと抱きしめて阻止をする。
「アキ、苦しい」
「見上げない約束ができるのなら、解放してやる」
「見上げたい」
じゃじゃ馬な返答に、断固腕を緩めずに応戦する。
「見上げさせてたまるか」
「じゃ私もあと少し、こうしています」
晶の体に腕を回した遥が、顔を擦り付ける。
「人のぬくもりって眠くなるんだな」
正直、あまりよく眠れなかった昨日の睡眠不足が、ここに来て、遥のほどよい重さと温かさにまぶたが重くなる。
「私も眠くなりました」
あくびをした遥をうっすらと確認して、晶は目を閉じた。