女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 頭にキスをして、再び触れたい気持ちを押し留めた。

「穢らわしいとしたら、そういう気持ちを持つ男の方だ」

「そんな、アキは、綺麗です」

「そう。なら、この話はおしまいにしよう」

 立ち上がろうとした腕をつかまれ、離れかけた体は引き戻された。

「待って、ください」

「なに」

 これ以上、触れたりしたら。
 揺らぐ心に、遥の消えかけた声が届く。

「もう少しだけ、このまま」

 離れなければという思いは、簡単に覆されそうになり、ギリギリの理性で諭すように告げた。

「俺は、いなくならないから」

 遥は唯一の心の拠り所だった祖母を亡くした経験から、晶が離れていくのを極端に不安がる傾向にあった。

 ただ、今は適切な距離を。
 その気持ちを上手く伝える術を、晶は持ち合わせていない。

 遥が晶の腕の中で、ギュッと晶のシャツをつかんだのがわかった。

「アキも、怖い、ですか?」

 見上げられ、頬に遠慮がちに触れる指先。
 その手を包み込み、晶は目を閉じて頬をすり寄せた。

「ハルを傷つけそうで怖い気持ち半分と、自分がおかしくなりそうで怖い思いも半分」
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