女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「そっか」

 安堵したような声を聞き、つい不満を漏らす。

「なんだ。俺も怖がっているのなら、安心なのか」

「安心、というか。アキでも怖いんだって思ったら、その。一緒なんだって、嬉しいというか」

 なんとなく面白くなくて、遥の顔に自身の顔を近づけて、鼻をかじった。

「ひゃっ」

「グラタン。作るんだろ」

 今度こそ、体を離して立ち上がる。

「ふふっ。そうでした」

 楽しそうな遥に晶は頬を緩め、覗き込んで唇を軽く重ねた。

 目を丸くした遥が、晶をたたく。

「もう! アキって、実はキス魔ですよね」

「知るか。そんなの」

「酔って、誰彼構わずキスしちゃうタイプですか」

 キスなんて、ハル以外にしたいと思うわけがない。
 キスも、それ以上も。

 不埒な感情が再び芽生えそうになる晶に、遥は断定的に言った。

「直樹さんも、被害者ですね」

 ブッと吹き出し、呆れた声で念押しする。

「一応、確認しておくが、俺は男が好きってわけじゃないからな」

「わかってますよ。男じゃなくて、直樹さんだから、って話ですね」

「だ、か、ら! 直樹とはそんなんじゃない」

「え〜」
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