女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「アキ!」
憤慨した声を耳にして、重いまぶたを上げる。
昨晩はすぐに眠りについた遥に反し、晶は到底眠れるわけもなく、そっとベッドから抜け出し、遥の部屋で眠ったのだ。
先に起きたらしい遥は、部屋中を探したのだろう。
目の前には、腕組みをして見下ろしている遥。
どう見ても、小学生が懸命に威嚇しているようにしか見えなくて、思わず吹き出した。
それが余計に、遥の機嫌を損ねてしまったようだ。
「なにがおかしいんですか」
「いや」
体を起き上がらせ、白々しく目を逸らすと、遥は目をつり上げ、顔を背けようとする晶の頬に両手を当てた。
「誤魔化さないでください」
んだよ。こいつ、調子に乗りやがって。
「誤魔化してねえよ」
晶は頬を挟む両手の片方の腕をつかみ、自分の方へ引き寄せた。
よろめいた遥の後頭部に手を当てて、唇に自身のそれを重ねる。
柔らかな感触に胸が疼き、もう一度、重ねようとしたところで、グイッと押されて体が離された。
「な、んで」
「お前こそ、わかってないだろ。男と寝る意味」
揺れる遥の瞳を見ていられずに、髪をくしゃくしゃとかき回した。
「俺はエロじじいなんだよ。覚えとけ」
未だ動揺する遥に「湯たんぽ買ってやるから」と、言い置いて部屋を出た。