女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 直樹を好きだから、という嘘で男性恐怖症の遥との危うかった時期を、乗り越えてきた経緯があった。

 けれどそれも、気持ちを伝えた時に嘘だったのだと理解しているはずだ。

「いい加減にしないと、思い知らせるぞ」

 クスクス笑っている遥の体に腕を伸ばすと、遥が息を飲んだのが聞こえた。

「キャッ。嫌ッ」

 捕まえた遥の体に、手を這わす。
 遥が身動いでも、執拗に捕まえた。

 気が済んだところで手を離すと、涙目の遥が体をくの字に折り曲がらせ訴える。

「くすぐるなんて、卑怯です」

 非難する眼差しを向けられ、平然と言ってのけた。

「クソガキの、減らず口の塞ぎ方」

 キスしか能がないみたいに、言いやがって。

 鼻を鳴らし、一瞥をくれると、反撃のつもりか、遥も晶に手を伸ばした。

 遥もくすぐっているつもりらしいが、痛くもかゆくもない。

「ちっとも効かないな」

「我慢できるなんて、ずるいです」

「我慢もなにも」

 見下げた頭をかき回し、「作るんだろ。グラタン」と言い置いて、リビングに置きっぱなしのスマホを取りに戻った。
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