女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「そんなに固く閉じてると、唇が傷つく」
唇を優しく舌でなぞると、遥は肩を揺らした。
意固地になっているのか、ますます固く、目さえもギュッと瞑ってしまった。
遥は、晶からガタンと椅子を引いた音を聞き、変な緊張感を高まらせた。
前みたいに椅子ごと抱きしめられるのかと身構えていると、シンクの方から水を流す音が聞こえた。
「え」
拍子抜けして目を開けた先で、晶は洗い物をしている。
駄々をこねる自分に、呆れてしまったのか。
けれど、先ほどキスした唇は優しくて。
そうこうしているうちに洗い物を済ませ、晶はリビングへと歩いて行ってしまう。
やるせなくて、だからといってリビングに行くほど素直になれずにいると、「ハル」と優しく声をかけられた。
「なにやってんだよ。こっちに来いよ」
晶は、リビングのソファに座っていた。
いつもの一人がけのソファではなく、二人がけの方に。
「ハル。ほら。隣」
いつもトントンと隣をたたいて呼び寄せるのは、自分の方なのに。
今、甘い顔をさせて呼んでいるのは、晶の方で。
なんとなくバツが悪くて、おずおずと歩み寄ると、腕を引かれて抱き寄せられた。