女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「やっぱり、嫌か。俺も気が重い」

「それは、その。元婚約者ですし」

 あの人。
 と呼ぶのは、形ばかりの許婚だった人物。

 その人との結婚については断るつもりが、相手から断られ、二度と会わないのだと思っていた。
 それがこんなにも早く、会う機会が訪れるとは思わなかった。

 それも、向こうからのコンタクトで。

「だから、あの人は婚約者でもなければ、今は完全に赤の他人だ」

 ああ。こんな面倒な言い合いになるのなら、やはり断ればよかった。
 そうは思ってみても、後の祭りだ。

「そうかも、しれないですけど。赤の他人に、相談を持ちかけたりしないと思います」

 晶はため息を吐き、頭をかいてぼやく。

「急いでいるらしい。仕事の依頼なのか、胸騒ぎがする」

「助けてと、言われたら」

 不安そうな遥に、晶は抱き寄せていた頭を撫でた。

「弁護士的に助けられる内容ならば、尽力する。そうでないのなら、丁重に断る」

 遥はなにも言えず、再び口を引き結んだ。
 仕事でも、彼女と一緒にいてほしくない。
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