女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「ハル? ったく。だから、唇が傷つくだろって」

 覗き込んだ晶は、優しく唇に触れた。
 それから、頭をグリグリと擦り付けた。

「こんな風に近くにいたいのも、キスをしたいのも、ハルだけだ。それを信じてくれと言われて、簡単に信じられるとは思わないが」

「それなら、一緒にいてください。今、離れて眠るなんて嫌です」

 ギュッとしがみつく遥に、心がさざめく。

「こんな話をした後で、手を出されるとは思わなかった。は、ナシだからな」

 低く、酷く冷淡な声が出て、遥を怖がらせ断られたい気持ちが全面に出ている自分に、心の中で苦笑する。

 けれど、遥は小さくコクリと頷いた。

 晶は遥を抱いたまま立ち上がり、大股で歩き出す。

「アキ?」

 不安げに問いかけても、返事はないまま。
 寝室のベッドに下ろされた。
 そして、髪をクシャクシャとかき回した晶が、遥に覆い被さった。

「嫌ならちゃんと嫌と言えるか? ハルが嫌ならしたくない」

 今までのように無邪気にくっついて、晶から触れられた時とは違う。
 お互いの同意の上で、愛し合おうとしている状況なのだと、ひしひしと感じて緊張が高まる。
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