女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 本当は擦り寄って来たベッドの中で、遥に触れてしまいたかった。
 けれど、その後どうなるかくらい簡単に想像がつく。

 今も、あれだけの言動で動揺している遥が、ぼんやりとした顔でパンをかじっている。

 遥はつい最近まで『男なんてこの世からいなくなっちゃえ!』と、まで思っていた時期もあったくらいの、男性恐怖症だった。

 晶は晶で、女嫌いだった。
 女と同じ空間で呼吸をするのでさえ、嫌悪感を感じるほどの。

 そんな2人だから、異性と付き合う考えは毛頭なく、その手の話題は避けて生きて来た。

 そのしわ寄せが今、総動員したみたいに押し寄せていた。

「悪い。意地悪が過ぎた。ただ、ハルも少しは考えて行動しろ」

 謝りの言葉を口にしつつも、つい不満が漏れる。
 遥も、反論するように口を開いた。

「私だって知っています。恋人が夜、一緒に寝るという意味くらい」

 晶は思わぬ反論に片眉をつり上げ、遥の続きを待った。

「アキは……アキも、女性の裸に興味があるんですか」

 ブハッと盛大に吹き出し、咳き込むと「大丈夫ですか?」と、冷めた声をかけられた。
< 6 / 160 >

この作品をシェア

pagetop