女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「怖いなら、やめましょう」

 晶の胸元に顔をうずめ、体にギュッと抱きついた。

 やっぱり私たちに、男女の大人の関係なんて無理なんだ。
 そう結論付けて、ホッとする自分がいた。

「いや。だから、ハルなら大丈夫。大丈夫というか、余計に触れたくなって困るというか」

 抱きついている遥を、晶も抱きしめ、ぼそりと告げた。

「もう一度だけ。聞いちゃダメか」

「聞いちゃダメか」と、言われても。
「いいですよ」と言って、聞かせられるものでもなくて。

「もし、やっぱりダメだったってなったら、どうするんですか」

「ならないから」

 その自信はどこから来るのか。
 そう言われたところで「いいですよ」とは、口が裂けても言えない。

「体ガチガチ。なんていうか、耳弱いよな。ハル」

「うわ」

 思わず漏れた声に、晶は笑う。

「なに。失言?」

「だって」

 遥がごにょごにょ言っていると、晶は平然と言ってのけた。

「耳、舐めていい?」

 心臓が飛び上がるような問いかけに、飛び退くように晶から間合いを取った。
 両耳を押さえ、揺れる眼差しを向ける。
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