女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「いえ。助かりました。母の奇行を知られていたとは、恥ずかしい限りです」
「奇行だなんて。子を思うこその、母の気持ちなのだと思います」
そんな綺麗な関係ではない。
そんな風に思い描ける沙織は、愛されて育ってきたのだろう。
自分とは、違う世界に住む人種だと改めて感じた。
沙織は、本当にそれだけのために会う約束を取り付けたらしく、話し終えると帰っていった。
直樹と二人デスクに戻り、互いに話すともなく席についた。
晶は椅子に腰掛け、ネクタイを緩めながら深く息を吐いた。
すると、離れたデスクにいた直樹が声を上げて笑った。
「ハハ。そりゃ沙織さん、すぐに帰るわな」
「なにが」
「首のとこ、見えてるぞ」