女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「変、ですか?」

 そこに立っていたのは、紛れもなく23歳の女性だった。

 控えめに化粧を施し、ふんわりしたコートの下にフレアスカートが覗く。

「陽菜さんが、せっかくだからって連れて行ってくださった場所で、化粧までしていただいて」

 なにも返答のない晶に、遥は声をかける。

「アキ?」

「あ、ああ。そうか。馬子にも衣装ってやつだろ」

「陽菜さんは似合うって、言ってくださったのに」

「いいから着替えてこい。もうすぐ飯ができる」

 晶は極力、遥を視界に収めないようにして、フライパンに視線を移した。

「はい」

 明らかに気落ちした声を聞き、胸が痛くなる。

 食事も黙々と食べ進め、すぐに「風呂、入ってくる」と席を立った。
< 73 / 160 >

この作品をシェア

pagetop