女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 風呂を出ると、眉を八の字にした遥が体を丸め、ソファに座っていた。

「悪い。遥はわかってるんだと思って。甘えてたんだな」

 思いもよらない謝りの台詞に、遥は顔を上げた。

「お会いした婚約者の方の件で、またなにかあったのかと」

「いや、そっちは、そっちで話さなきゃいけないが」

 言葉を濁らせる晶は、なにかに迷うような素振りを見せてから、真っ直ぐに遥を見つめた。

「ハルは、女だ。それは理解してるつもりだ。いや、つもりなだけだったな。ハルも化粧したり、お洒落をすればいい」

「ダメ、でしたか」

 遥自身も甘えていた。

 女は嫌いだ。という晶が、自分は大丈夫だと言い、特別だと言う。

 だから、自分は大丈夫なのだと。

 なんなら、可愛い格好をして見せて、晶を驚かせようと思っていた。
 子ども扱いする晶に、大人の女性として見てもらえるかもしれないと。

 笑ってしまう。
 ただ単に女らしい格好もなにもかもをしないから、大丈夫なだけだったのに。
< 74 / 160 >

この作品をシェア

pagetop