女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「お風呂で落としてきます」

「待てよ」

 腕をつかまれ、リビングから離れられない。
 かと言って、晶はいつもみたいに抱き寄せるわけでもない。

 本当に嫌なんだ。
 そう思って、やるせなくなる。

「ハルが嫌なわけじゃない。化粧とか、女を象徴する全部が嫌なだけだ」

「だったら! だったらアキは、化粧っ気のないズボンしか履かない子なら、誰でもいいんですね」

「そんなわけあるか」

 晶は遥を抱き寄せて、胸に抱いた。
 化粧の匂いが鼻をかすめ、眉を潜めた。

「化粧が、アキのシャツに付いちゃう」

「今さら心配することかよ」

 抱き締める力を強めると、「痛いです。アキ」と訴えられた。

「キス、するからな」

 宣言され、体を揺らす。
 顔を覗き込まれ、唇が重なった。

 舌を這わされ、ぞくりと背すじに痺れが走る。

「クソまずい」

 愛の囁きとは程遠い感想を聞き、晶の体を押した。

「もう、いいです。お風呂行ってきますから」
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