Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
「え、何作ろうかなー? あっ、優子は誰かにあげるの?」
さっきまで負のオーラ漂いまくりだったとは思えないくらい生き生きとし始める美穂。
「はぁー……そういうのだる……」
「えー? そんなこと言わないでよ」
「愛だの恋だの……」
「理解出来ない、でしょ? もー聞き飽きたよー」
「え?」
声を上げる夏川に美穂が「ああー」と言う。
「優子ってバレンタインの季節になるとそう言うんだもん」
「あれ、橘と倉本って中学同じだっけ?」と言う夏川に、美穂が「違うけど、塾が同じで中3の時から知ってるの」と説明する。
「へー」
「って思ってたんだけど」
「お?」
「まあ、理解くらいはしてあげるよ」
「うわー、何その上から目線。えっ、ていうかどんな心境の変化? もしかして好きな人、出来たとか?」
好きな人? いや、まさか。
「違うけど」
「あやしー。怪しすぎる! 絶対良い人出来たでしょ!?」
「だから、違うってば。ほら、元気なら帰れ」
「うわ、教えてくれても良いじゃん!」
私が二人の背中をグイグイと押し、教室から追い出そうとしても、振り返りながらごちゃごちゃと何か言っている。
「あっ、優子! その人にちゃんとチョコ渡しなさいよー?」
やっと行った、と一息ついている所で美穂はひょこっと顔だけ覗かせてそう言い、それからほんとに帰っていった。
だからチョコあげる相手なんて居ないってば。