Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
Cherry Blossoms
「レイ何か欲しい物ある?」
コーヒーを飲み終わる頃、ユウはそう言った。
「え? 欲しい物? 特に無いけど……何で?」
「勿論お返しのホワイトデーのことだよ。何かあるだろ? ほら、素直に言ってごらん」
正直本当に何もいらないのだけど、ほれほれと頬をつつかれて仕方なく絞り出してみる。
「んー……あ、物じゃ無いけど……」
「ん? 何?」
「お花見、とか……」
「へー、レイ桜好きなの?」
「悪い?」
「いや」
意外だと思うかも知れないけど、綺麗なものは好きなんだ。特に夜空とか美しい景色とか、そういうもの。それを見ている時だけ、嫌なこと全部忘れられるから。
「あ、でもレイ人混み苦手なんじゃなかったか?」
「う……」
そう。だからいつも花見という花見には行けなかった。
道を歩いていてたまたま桜が咲いているとか、学校の校庭の桜を見てるとか、それしかない。
でもユウとなら、少しくらい気にならないかなって、そんな気がするんだよ。
「……じゃ、人が少ないとこ行こう。満開になる前とかさ。ね?」
「うん! 行きたい」
「ふふっ、素直なレイやっぱ可愛い」
「え?」
よく聞こえなくて聞き返すと、ユウはなんでもない、と教えてくれない。
「楽しみだね」
「うん」
それから私はいつになく浮き足立ってどこに行こうかとスマホで調べている内に時間が過ぎ去っていった。
――その日が最悪の日になるとも知らず。