Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
「おまたせ」
3月20日。
ユウはまだ少し冬っぽさの残る服に身を包んで待ち合わせの時間に現れた。
まだ桜は満開では無いけれどかなり花が開いてきていて、花見は出来るくらいだ。
人の混み具合と桜の開花具合の妥協点はここ2、3日だろう。
「行こ」
「おう」
歩き出したユウの背中を追う。
彼の今日の格好はジーンズに白のシンプルなシャツ。あとネイビーのロングニットカーディガン。
今日は何だか中性的な雰囲気だ。
特別お洒落してるって訳でも無いんだけど、でもそれが様になるっていうか。
たまたますれ違った時にカーディガンの裾が目にチラッと入って、ハッと振り返りたくなるような、そんな感じ。
「朝飯ちゃんと食った?」
「え? まあ……だって昨日またあんなに作っちゃったし。ユウこそちゃんと食べてんの?」
「食べてる食べてる。でもあれ食べきるの毎回2日くらいかかるんだよな」
「え、私3、4日はかかるけど。なんでだろ」
「えっマジか。でもレイあんま食わなそうだしな」
「そんなこと無いと思うけどなー」
そんなどうでもいいようなことを話しながらゆっくりと川沿いを歩いていく。
今日の目的は花見だって分かってるからか、歩くペースはいつもよりずっと遅い。隣で川を下っている葉っぱといい競争なくらいだ。
しばらくするとカーブの先から桜が一本出てきた。
「あ、咲いてる」
「ほんとだ。あれ、思ったより咲いてんね。混んじゃってるかな……」
そんなユウの予感は的中して、超満員というほどでも無いがかなり人が多くいる。
「あー……」
多分私を気遣ってのことなんだろうけど、今にも「やめる?」と言い出しそうなユウに、私は言い訳を考えていた。
あれ、何で言い訳なんか。別に私は……。
そう思って、諦めた。
私はユウとなら周りなんか構わないんだ。彼と過ごす時間が心地よくて楽しくて、周りなんか見えてない。
「いいよ別に、混んでても。それよりほら、桜見よ?」
「うん、そうだね」
ほら、そうやって君が笑ってくれるだけでもう他の人なんてどうでもよくなる。