Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
段々と桜の木の感覚が狭まっていき、ついに頭上が全て桜の花で埋め尽くされる。
「わあ……」
風が吹く度に花弁が私達に降ってくる。それは光の粒が降ってくるみたいに見えた。
どこかで桜は陰木だと聞いたことがある。植物学的には日光の当たる場所で育つから陽樹になるが、陰陽道では陰樹になるそうだ。
昼間の花見盛りの桜を見ていると全くそんな風には見えない。
まるで桜の木自身が光を放っているんじゃないかと思うくらい、神々しくて美しい。明るいイメージの方が強い。
「ほんと綺麗……」
満開(間近)の桜を見ていると、頭の中が空っぽになる。脳が桜とそれを取り巻く情報以外を全てシャットダウンして、体全てを使って目の前に広がる景色を吸い込む。
周りの雑音も人影も何もかも無視して、ただその幾層もの儚さ故の荘厳な姿に圧倒される。
その感覚が堪らなくなって、まるで麻薬のように毎年それを求めてしまう。
それから。
それから、――桜が咲く頃の記憶はまだ温かいものが多いんだ。
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『――、桜、綺麗だね!』
『そうだね。綺麗』
まだ幼稚園生だった私に向ける――の柔らかな笑顔に風に乗った花弁が光を添えた。
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『あーあ、もう桜散っちゃうね』
大きくなっても桜が好きで、散ってしまうのが名残惜しくてそう言うと――は笑った。
『また来年、あるだろ? また見に行こう』
『そうだね』
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