Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
「はー美味しかった……。ね、この後どうする?」
のんびりと会話を多目にしながらだらだらとお昼を食べて、もう――いや、まだ2時にもなっていなかった。
ここの桜は夜にライトアップされる。それも見たいって私が言ってそうすることにしたから、まだまだ時間はある。
「んー……何もすること無えな。……あ、あれ」
ユウは1つの屋台を指差す。
“チョコバナナ”と大きく書かれている屋台だ。
「食べたい」
「へ、チョコバナナ?」
「だって食べたこと無いんだもん」
「えっ」
珍しい……けどまあ、そういう人も居るかも知んないし。……ね?
「レイもいる?」
「あ、じゃあ食べようかな」
「オッケー。買って来るな?」
「うん、ありがとう」
すぐそこだから、とユウが買いに行くのを確認してから、私は東屋を出て少し小高くなっている隣の広場に登った。ほんの少し、他の人よりも背が高くなって、桜の木が近くなる。
絵の具で一面塗ったような青空を桜越しに見上げていると、背後から“パシャッ”という音が聞こえた。
振り返ると、チョコバナナ2本を左手、スマホを右手に構えたユウが立っていた。
「え、何。今撮った?」
「うん」
「いや、『うん』って。何でよ」
「いやあまりにも綺麗だったから」
「は?」
訳の分からない言い訳をしながら近付いてくるユウ。
「ね、どうせなら私だけじゃなくて二人で撮ろうよ」
「お、そうだな」
そして私達は桜を背景にして、顔を寄せ合う。
――パシャッ
ユウは今撮った写真を表示して見せてくれる。
「レイ良い顔してるじゃん」
「そ?」
確かにその写真の中の私はちゃんと笑っていた。
でもそれよりもユウの笑顔が優しくて、胸がキュッとする。
ああもう。この心臓の音、どうしてくれよう。
こんなことで気付くなんて。
こんな写真で、――彼を好きだと自覚するなんて。