Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
「何するのよっ」
「分かりません」
「え?」
「碧弥美さんの気持ちは、私には分からないです。きっと碧弥美さんにしか分からないです」
「……」
私は脅されている状況で気の利いたことを言えるほど度量のある人間ではない。それなのに碧弥美さんが泣いているのが分かった。
それほど温もりに飢えていたのだろうか。
「放せ!!」
彼女が弱さを見せたのはほんの数秒間だけだった。数秒後には彼女は我に返ったように叫び、私を払いのけた。
その力が思ったよりも強くて、私は壁に打ち付けられる。
「いっ……!」
「私に触るな……! ――如月(きさらぎ)!!」
「はい!!」
部屋の外に向けて呼ぶと、スーツを着た険しい顔の人が入ってきた。
うわあ……なんか本当に……ヤクザなんだ。
「この子を坊や達に戻して」
「は! 良いんで?」
「もう良いの! こんなヒョロっちい娘なんか売り物にならないわよっ」
「はっ。……っ、姐さん、どうし……」
如月と呼ばれた男が碧弥美さんの涙に気付いたようだ。
男はおろおろと手を伸ばすが、碧弥美さんは背を向けて「何でもない! 早く連れてけ!」と言って部屋を出ていってしまう。
「お前、姐さんに何しやがった!!」
ビクッと体が震えた。
怒鳴り声には反射的に体が強張るようになってしまっている。
まあ、それを人に晒すほど弱くは育たなかったが。
私が黙って彼を見上げると彼は言葉を詰まらせた。そしてその件に関して問い詰めるのをやめ、私を立たせる。
「来い」と言われ、着いていくとどうやらここはビルのようだと分かった。
下の階に連れられて大人しく従うと、そこには達弘達の姿があった。
「用済みだ。好きにしろ」
男はそう言いながら私を集団の前に差し出す。