Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
「っ!」
――やだ!
私は思わず男の手を掴んだ。
置いてかないで。そんなことを思いながらその手に縋る。
相手はヤクザだとか、ここでどっちに転んでも最悪な結末しか待ってないとか、そんなことにも気が回らなくなるくらいには、私にとって達弘との出来事はトラウマになっているようだ。
「ウスッ! オラッ、こっち来い!!」
「やっ! 放して、触んないでっ!」
しかし私の抵抗も男の力の前には虚しく、どんどん輪の中へ流されていく。
後ろを振り返っても、もうさっきの男は居なかった。
両脇を固められて、達弘の前に運ばれる。
「お前何したの? 碧弥美さんに嫌われるなんて」
「達弘……」
「まあこっちは思いがけない収穫もらったから良いけど。もういい加減諦めな? ほら……」
手を伸ばされて、思わず彼の腹を蹴った。不意打ちのせいで彼は後ろに派手に倒れこむ。
「達弘さん!!」
「大丈夫っすか!?」
周りの少年が達弘を立たせる。
その間に、私は振り返る反動で後ろの男に肘を思い切りぶつけた。
「タケルさん!!」
どうやらそいつも立場的に上の方の奴だったらしい。
不意打ちで優勢でいられるのはほんの少しの間だ。
周りの状況を把握しきれないまま、次々と男が殴りかかってくる。
くそっ、煩わしい……!
周りを囲まれているせいで身動きが取れない。
それでも何とか見えている扉に辿り着こうと藻掻く。
殴られ蹴られ、殴って蹴って。無我夢中だった。
だけど。
ここには何人いる? 次から次へと相手がいて、もう持たないよ。
誰か、助けて……。