Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
優子は強い子に育った。いや、違う。鎧を着けるのが上手く育った。
両親に何を言われても表情に出さなくなった。
全てに反応していたら心が死んでしまうと判断したのかもしれない。自身の傷付いた部分、弱い部分、全て隠すようになった。
それでも俺には心を開いてくれていたと思う。
そんなある日、ある噂を耳にした。
「地域でも目立つ不良が優子に目を付けた」と。
その頃優子は中学生で、兄の俺から見ても美人になった。それは次第に増していった。
優子自身は気付いていないようだが、彼女はとても綺麗な顔立ちをしている。街を歩けば男はほぼ優子を見ている程だ。美人なのは勿論だが、纏うオーラが人を惹き付けるのだろう。
ただ、目を付けたと噂の奴が質の悪い野郎だった。暴走族に入っていて、詳しい人に聞けば次期総長だと噂されていると分かった。
その暴走族は評判が悪い。
暴走行為、喧嘩は勿論、薬物や集団強姦の噂もあった。
それが清涼会だ。
俺はそいつに近付いた。優子の兄だということは隠して。俺から優子に繋がるのを危惧したからだ。
一番悪い奴を見方にしてしまえばもう誰が優子に興味を持っても何かされる前に防ぐことが出来る。
そして俺はよくそいつらとつるむようになる。
ただ――それを優子に見られたのは想定外だった。
『ねえ、お兄ちゃん。今日一緒に居たのって……』
その怯えた目は、鎧を着けるのを覚える前、両親に向けていたものと同じだった。
『何でも良いだろ』
俺は――優子に嫌われるのが、怖かったんだ。
優子があまりにも大切過ぎて、その両親に向けた目を向けられるのが怖かった。
それでもいいと自分に言い聞かせた。
優子に嫌われても、優子を守ることが出来ればそれで良いと。