Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
*
「お兄ちゃん!!」
レイの高い声が響いた。
「お兄ちゃん!! 助けてっ!!」
その直後、レイは何かを飲まされ、三十秒もしない内にガクッと膝を折った。
「優子!!」
「レイ!!」
レイの元へ駆け寄ろうとするが、周りを固められていて動くことが出来ない。
何だ? 何を飲まされた!?
何か毒薬とか? いやまさか……。
高田が強姦を目的としていたことを考えれば、デートレイプドラッグ(意識の無い相手に性的暴行をはたらくために使用される睡眠導入剤などのこと)の一種とも考えられる。
でもそんなにすぐ……?
「退け」
京一は低くそう言ってレイに向かって歩き出した。
「京一さ……」
「退けよっ!!」
その空間に京一の低くドスの利いた声が響き渡った。
京一はどうやら清涼会と繋がりがあるようで、少年達は怯えて道を開ける。
何者なんだ、橘京一。
それに清涼会の奴等は京一がレイの兄だと知らないようだ。
「貸せ」
レイの前まで行き、レイを抱える少年――恐らく高田達弘だろう――にそう言う。
京一の形相に高田は怯えて大人しくレイを渡した。
そして京一は左手でレイを支えながら、右手で高田の胸ぐらを掴み上げ、壁に叩き付ける。
「……うぐっ! ゲホゲホッ……!」
「何飲ませた」
「す……いみんやく、です……」
「寄越せ。余ってんだろ?」
すると京一の横に居た別の少年が京一に薬を手渡した。
それを受け取りながら京一はその少年に聞く。
「これ何錠分飲ませた。……あぁ!? てめえ舐めたこと言ってんじゃねえぞ!!」
その少年は知らないというジェスチャーをし、京一は声を荒らげる。少年はビクッと体を震わせ後ずさる。
すると高田が右手の人差し指と中指を立てて見せた。
「チッ2錠も……それだけか? 他に何か混ぜてねえだろうな!?」
「は、い……」
「また優子に手ぇ出してみろ。――てめえの体使い物にならなくしてやる」
京一は高田に顔を近付けてとても低く、唸るようにそう言った。
言い終わって一瞬間を置いてから乱暴に高田を放すと、高田は座り込んで苦しそうに咳をする。
京一はレイの背中と膝の裏に腕を入れ、軽々と抱えた。
そして自身が蹴破ったドアに向かって歩き出すと、また少年達が避けて道が出来る。
「マジで何者だよ……」
俺達は廃墟ビルを後にした。