Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
the First Star of Evening
「あっ、ねえ優子(ゆうこ)! いい加減お兄ちゃん紹介してよー」
塾の自習室から出ると同じ塾生の美穂(みほ)と鉢合わせた。ちなみに優子というのは私の本名だ。
「はっ、やなこった」
「え~、いつになったら紹介してくれんのよ!?」
「残念ながら、一生無いね」
「ケチ!」
個性的と言われる私と違って正統派な美形の兄に、女はすぐに一目惚れしてしまう。
「そうやって独り占めするなんてずるいよ!?」
「あははっ、してないよ。自分で当たって」
まだブーブーと文句を言っている美穂にヒラヒラと手を振り、私は塾を出た。
独り占め?
――笑わせないで欲しい。
違う小、中学校の美穂は知らないんだ。あいつが最低な野郎だって。
いや、同じ学校の奴らでも知らないか。
あいつは質(たち)が悪い。
悪い奴で1番質が悪いのはどんなタイプだろうか。
実際に悪いことをする奴? 何も考えない馬鹿な奴? 力が1番強い奴?
――いや、違う。
1番悪いのは、頭が良い奴だ。
悪質な頭の良さだ。
兄(あいつ)は質が悪い。
頭が、良いんだ。
――ドンッ
「いってー……」
そう、丁度。
「ちょっとおねーちゃん、痛いんだけどー」
丁度、このぶつかってきた奴らとは正反対に。