Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―



「にしてもほんと、橘ってすげえなー」


「ん?」


「いやなんか……イケメンっつーの?」


「ふっ、何それ。私女なんですけど」


「いや、格好いいってこと。俺もお前みたいになりてえな」


「お待たせしました~、季節のパスタとフライドポテトです」



夏川がアホなことを口走ったその時に、注文していた夏川のパスタとフライドポテトが運ばれてくる。


私みたいになっても何にも良いことなんてないよ。



「橘って色んな噂流れてんじゃん?」



夏川はパスタを頬張りながら言う。



「あぁ……ま、夏川には負けるけど」


「ははっ、まあな」



自分でも分かっている。気付かないほど私は鈍感ではない。

元々絡まれやすい体質なのだが、高校生になって行動範囲が広がったからか最近それが酷くなっている。

絡まれている場面を目撃されることも多々あって、無いことばかり噂になる。

例えば、5、6股してるとか、援助交際してるとか。どこぞの暴走族の女だとか、訳の分からない噂が流れた時は流石に笑ってしまった。



「それで、橘って嫌いなタイプの女かなって思ってたんだ。駄目だな、噂なんて信じちゃ」


「そう?」


「うん。お前良い奴だもん」


「はっ、それはどうかな。良い奴ではないよ」



本当に、良い奴なんかじゃないんだ。

何もかも嫌で嫌で仕方ない。愚かな人間も、このくだらない社会も、ありもしない愛を歌うシンガーも、甘ったるい恋愛小説も、全てが嫌いで。

……そんな自分も嫌いで。



「ううん、橘は良い奴だよ」



夏川は目を伏せて言う。


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