Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
「俺を気味悪がらないでこうやって普通に接してくれるじゃん」
「はあ? そんなの普通でしょ。なんで気味悪いなんて思うのよ」
「ふっ、ほらね? 俺さ、生粋のゲイなんだ。女の子が本当に駄目で。今までカミングアウトした人達全員から『気持ち悪い』って言われたよ」
「そっか」
夏川の目は寂しそうで、放って置けないと思わせる。
「でもゲイでも恋して良いだろ、って思いは変わらなくて。裕人に告って、OK貰った時は舞い上がった。生まれて初めての彼氏だった。でもなー……結局こんな結末よ」
「……私はそれに『いつか絶対素敵な人が現れるよ!』みたいなことは言えない人だよ。『愛情なんて幻想を信じるほうが馬鹿だ』って、こんなことしか言えない人間」
「ははっ、橘らしくていいじゃん。橘は優しい人だよ」
「だから、今の話聞いてた?」
うん、と言いながらフライドポテトに手を伸ばす夏川。
「少なくとも、橘に救われた人間がここに1人居るってこと。それは事実だろ」
「ふっ、大袈裟」
それから私達は残りのフライドポテトを食べ終え、店を出た。
「割り勘で良いって言ったのに」
「いや、今日は俺が巻き込んだことだし。お礼も兼ねてさ」
もう外は暗くなってきて、私達は空を見上げる。
「あ、オリオン座」
光に溢れたこの都会では、空気の汚れたこの都会では、あまり星が見えない。
それでもオリオン座のベルトの三ツ星はあまりに見付けやすくて、私は唯一、オリオン座だけは見付けることが出来る。
「俺の……知り合いがオリオン座好きなんだよなあ……」
夏川がしみじみと言う。
その時ふとユウの顔が脳裏に浮かんだ。
あれ、ユウってオリオン座好きなんだっけ? いや、ユウはLINEのアイコンをオリオン座にしているだけか。
その有名すぎる配置を見つめながら、そんなことをぼんやりと思った。