Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
「彼女じゃねえけど。お前に関係ねえだろうが」
「あれ、随分酷い言い草だね。昨日は『裕人……?』ってアホ面晒してた癖にな」
「っ……」
夏川は顔を歪ませる。
昨日の今日だ。普通に振る舞っているが傷が癒えているわけがない。
「え……昨日? 何かあったの?」
何も知らない美穂が聞く。
「実はさ……」
「何してんの、こんなとこで」
何を言い出すのか見てられなくて私は出ていく。
手塚は私の顔を見ると渋い顔をした。
大体昨日は手塚は人に言えるようなことは何1つしていない。言ったところで自身の評価を下げることばかりだ。
何かデマでも流すつもりか?
「いや、別に……」
「あっそ? 何も用無いなら消えてくれる?」
「はっ、清哉、お前女に2回も守ってもらって情けねえな」
本性を知らない美穂の前でも取り繕う気は無いのか、夏川にそう吐き捨てる。
「っ……」
「女とか男とかそういう下らないことで人間を見るあんたの方がずっと情けないと思うけど」
手塚は黙る。
「ていうかその“女”に尻尾巻いて逃げたのはあんたでしょ」
「っ……!」
そこで丁度人が通りかかり、手塚は見られたらまずいと思ったのか去っていく。
あんな奴が首席とかほんとか? 終わってんな、この学校も。
「え、昨日何があったの?」
「ああ……」
「俺戻るわ」
それまで黙っていた夏川はごみをまとめ、立ち上がる。
それは話すなということなのか、私から美穂に言えというサインなのか、少し迷う。
私は夏川の姿が見えなくなってから口を開いた。
「昨日……」
「えー、手塚ってそんな人だったの……」
私の話を聞き終わると美穂が言った。
「だからあんたも気を付けなよ」
「えっ、私も?」
「夏川とつるむんなら目つけられるから」
そう言うとなるほどね、と美穂はうなずく。
「でもそしたら優子が守ってくれるから安心だね」
「あのねー、私も体は1つなんだよ。自分のことは出来るだけ自分でなんとかして」
「はーい」
そこで予鈴が鳴り、私達は慌てて立ち上がった。