Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
それからようやく彼が放してくれて、私は風呂を借りる。
まだ慣れない豪華な洗面所で鏡を見て、思わず「えっ」と声が出た。
――首元に、小さな赤い痕。
「これって……キス、マーク……?」
初めてだ。ユウが痕をつけたのは。
さっきユウが首元に唇を当てた時につけたのだろうか。気付かなかった。
風呂から出てリビングに戻ると彼は机に突っ伏していた。
「ユウ、出たよ」
そう声を掛けると脱力した声で返事をし、風呂場へ向かう。
本当に、どうしちゃったの。何にそんな悩んでるの?
気になったのに聞かなかったのは彼が話してくれると思えなかったから。何故か、彼はこのことだけは固く閉ざしているような気がしたんだ。
彼は風呂から出てくるとすぐに寝室に入ってきた。そして私を抱き締めて、横になる。
「ユウ……? 何、今日するの?」
「いや……このまま寝たい」
「このまま?」
それはつまり、私を抱き締めたまま?
「駄目?」
「いや……良いけど」
どうしたの、ユウ。今日だって、「会いたい」なんて恋人みたいな柄にもないLINEをしてくるから驚いて来てしまったんだ。
今までずっとポーカーフェイスで、いっつも余裕があって、他人に踏み込まれるのを凄く嫌って、フラフラしてて人脈広い癖に結局は一匹狼で。
それなのに今日は表情に感情が全部出ちゃってるし、それを隠そうともしないし、何だか怖い。彼は壊れてしまいそうだ。
「何か、あった?」
「……秘密」
やっぱり、それは教えてくれないんだね。
「分かった」
「ごめん」
彼はずっと眠れないようだった。私は数時間は睡魔と戦っていたが、まだ起きているらしいユウを残してついに夢の国に旅立った。