Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
My Ex
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男達が、夏川清哉を襲えという手塚裕人の要求を飲んだ理由は単に興味が湧いたからだった。
夏川の容姿が悪く無かったのと彼らが性欲溢れる見境ない年齢だったことが不幸にも重なり、あんなことが起こってしまったのだ。
ちなみに彼らと手塚の繋がりは中学が同じということだ。手塚は勿論その頃から学力では誰にも負けなかったのだが、それよりも不良グループとつるむことに精を出していた。
故に頭の回転の良さが悪い方向に出、不良グループ内ではリーダー格のようになっていたのだ。
とにかく、この出来事は橘優子の予想外の登場によって幕が引かれる筈だった。
だが、事は更に悪い方向に転がろうとしていた。
彼らは優子が言う通り、変にプライドが高かったのだ。
「ったく、何なんだよあの女」
別に夏川清哉にそこまでこだわりがあった訳では無く、彼で楽しめなかったことが彼らを苛つかせているのではない。
そう、彼らは橘優子という女に脅され逃げ帰ったことを認めたくないのだ。
それを彼女の悪口で発散させていた時だった。
「へー、そんな女が居たんだ? どんな奴?」
彼らの会話に割り込んだのは高田達弘(たかだ たつひろ)だ。
実は一件の後流れた“夏川が清涼会と揉めた”という噂はあながち間違いでは無かった。彼らは清涼会の下っ端だったのだ。そしてまた、高田も清涼会のメンバーであった。
彼らは上下関係は厳しい為、基本同じ歳、もしくは近い歳で群れる。高田と彼らは同じ高1の学年だ。
「あー、何か見た目は悪く無かったよ。だけど動画とか撮って脅してきやがるし可愛げもねえ女でさ」
「どんな見た目?」
「黒髪のポニーテールで背はそんなに低くねえ。160半ばくらいか?」
「ああ。目はキツかった」
そう言うと高田は少し黙ってから「その女、右目の下にほくろあったか?」と聞く。
「えー、そんなんあったか? そこまで見てねえよ」
返ってきた言葉はこうだった。
まあそりゃそうだろう。そんな短期間で細かい特徴など把握しきれない。
「あっ、あったぞ。ほくろ」
だがたまたま一人だけ、見ていた奴が居たらしい。
それを聞いた瞬間、高田の口角が上がった。
「なあお前ら、ちょっと……」