Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
そして部屋の前に来て、帰ろうとするユウの肩を私は掴んだ。
「ん? 何?」
「“何?”じゃないよ! どうすんの、こんなに。私一人じゃ食べきれないって言ったじゃん!」
毎度のことながらあまりの振り回しっぷりに思わず声のボリュームが大きくなる。
「え、それは……俺も食べていいってこと?」
「う……早く中入って!」
いつ家に来るか予測なんて出来ない兄と父親が今日は帰って来ないことを願って、私はユウを中に入れた。
「うわあ……」
中に入るとユウは声を上げる。
酷く広い彼のマンションからしたら随分と狭く思えるだろう。
でもこれでも結構広い方なんだよ?
「……何か、生活感ねえな」
彼の口からは予想していなかった感想が漏れた。
「え? そう?」
言われてリビングを見回せば、確かに物は少ない。それはユウの言う通り、誰もリビングを使わないからで、生活感が無いという彼の感想は最もなことだろう。
でも違和感はそんなことじゃない。
「ユウんちだって生活感ないよ」
「えー、そうか? 俺は一人暮らしだけどさ。レイは……」
「一応兄貴と親父が住んでる」
「ふーん……」
「それよりほら、これ何とかしよ?」
私はテーブルにドサッと荷物を置き、「着替えてくる」と彼に言って部屋に向かった。
制服を脱いで部屋着に着替えて出ていくと、ユウはテレビを点けて見ていた。
「あ、そのテレビちゃんと点くんだね」
もう何年も点いているのを見ていないそれが、ちゃんと今日のニュースを発信していて、私は何だか不思議な気持ちになる。
「だな。じゃ、やるか」
彼はテレビを消し、腕まくりをする。
一応私が持っているエプロンの中で1番大きいサイズのものを持ってきたが、彼がそれを着けると何だが不格好だ。ユウは細いからサイズはあまり気にならないのだが、彼がエプロンを着けていること自体が違和感の原因なのだ。
「ふふっ……ユウが、エプロンとか……」
思わず笑ってしまう。